とある蛇の話
「図星か……」
「面倒くさいな……僕は善意で言っているだけなのに」
「要件ってのはなんだ?」
「単刀直入に言えば、僕は君を助けたい」
「神様が、人間を手伝うなんて禁忌なんじゃないのか?」
猫は可愛らしい声で鳴く。
「僕はね……あの有馬っていう青年が、ちゃんと更生させる様に試練をちゃんと手伝いたいっては思ってるんだけど……手出しできるポイントをすり減らしてしまってね……。そこで、人間である君を使って、干渉しようって魂胆さ」
「どうして、そう有馬にこだわるんだ?」
「それこそ、神様の気まぐれーー運ってやつさ」
「まったく、神様は適当だな」
「そうじゃなきゃ、人類はちゃんとここまで成長しなかったよ。そもそも手違いで生まれてきてしまった、生命体だからね。ってことで、君のポイントを使うね。まぁ、多少の嫌なことが君に降りかかるかもしれないけれど、大目に見て」
「おい!!ちょっと待っーーー」
全てを話し終えたのか、銀紙をまぶした様な一面の光に覆われて猫は消える。
瞬きをすると、そこには何事もなかったかのように色を取り戻した世界がありふれていた。
「うーん。仕方ないわね!!今回だけあんたの願い聞き入れてあげる」
「はっ?」
「ちょっと、「はっ?」って何よ!!自分から言ってきたくせに!!」
「あ……えぇ?で……でも……転校手当ダメなんじゃなかったのかよ?」
きょとんとする母さん。
「何言ってるのよ!!有馬くんは、隣の小林高校に通ってたじゃない!!その経歴を使えば何とかなるわ」
あの猫野郎……勝手に歴史を変えあがって……!!
「他にだめな所無いのかよ?」
「うーん、有馬くんが未亡人ってのは隠さないといけないかもしれないわね……」
どうやら、人の運命を変えたのはそこだけ。
というか、アイツは人ではないのだが……。
「でも、よかったわ」
「………何が?」
無愛想な俺を笑うように、母さんは俺のおでこを突く。
ほんのり冷たい手が、皮膚に触れた。
「遥と私ばかりに気を使って、毎日張り詰めていたから、他の事も考えれる様になった、理央を見れて、親として嬉しいの」
「は……はぁ!?何言ってんだ!!これは遥の為にーー行動してるんだよ!!」
「それでも、前の貴方は人と向き合おうなんてしようとせずに、遠ざけるような道を選んできたでしょ?」
俺の内面をすべて見透かされてしまっているように思えて、ドキリとする。
「私、理央が知らないだろうって高を括っている秘密の部分、私はよく知ってるところもあるんだからね?一人で背負うって事を思いすぎちゃだめよ?バイトも、遥、そして私のことも!!いい?」
仰け反る俺は、思わず頷く。
親を利用しようとした挙げ句、なんだか逆手に取られてしまった。
そんなこんなで、俺と有馬は朝の登校時一緒に登校する羽目となる。
明るくてうるさいアイツと、俺は今後上手くやっていけるだろうか……。
それだけが心配だ。
*