愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~
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「身体が、痛い」
「また後で一緒に寝るか?」
「寝せてくれるんでしょうね?」
「まだ続きのレッスンをご希望なら喜んでするが」
「欲しいのは睡眠です!!」
もう昼の九時過ぎ。
睡眠をまともに取った合計時間はよくわからない。
ダイニングテーブルの置いてある奥の窓があり、新宿が見渡せ明るい陽の光が部屋に広がっていた。
六人掛けの大きなテーブルの上には、洋食のモーニングが並んでいる。
考えてみれば昨夜は夕食を取らずにそのままベッドに引きずり込まれてしまった。
レンは最高の食事をしたとご満悦だが、私は何時間もの運動を強いられお腹がペコペコだ。
焼きたてのクロワッサンもふわふわのオムレツも、なにもかもが美味しい。
「楓は今日予定は無いんだよな?」
レンに問いかけられ、私はうん、と答える。
「昼の十一時半に打ち合わせがあるんだ。
一時間ほどで終わると思う。
部屋で待っていられるか?」
「大丈夫だけど、いいの?」
「もちろんだ。
そもそもあと少しで帰られるのは困る。
何ヶ月会えてなかったと思うんだ」
そう言われると恥ずかしい。
凄く私を求めていたこと、それは十分に味わった。
だけど会話がまだ足りていない。
「私だって沢山話したい。転職も出来たし」
「それは良かった。
落ち込んでいたから気になっていたんだ。
戻ったら楓の時間が許すまで一緒に過ごそう」
窓から差し込む光が、レンの綺麗な髪をキラキラと輝かせていてとても綺麗だ。
二人ともお揃いのホテルのパジャマで朝食をしている。
未だに夢のような気持ちのまま、レンと会話を楽しんだ。