愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~


部屋に入り、ダイニングテーブルの椅子に座らされる。
ダイニングテーブルの上には、すぐ食べられるように食事が用意してあった。
私がホテルに着く時間を会社から出るときにメッセージしたので、それに合わせてくれたのだろう。
レンがテーブルから離れた隙にスマホを確認すると、レンからの着信履歴がずらりと並んでいた。

「ごめん、心配かけて」

私がスマホを見せながら言うと、冷蔵庫から飲み物を持ってきてくれたレンが、いや、と席に座る。

「冷めたかもしれないが先に食事をしよう」

テーブルには豪勢なクラブサンドイッチに山盛りのポテトフライ。
コンソメスープにカットフルーツも用意してあった。
レンはお酒を飲むこと無く、炭酸入りのミネラルウォーターを飲んでいる。
私もサンドイッチを食べながら、どう話そうか考えていた。

テレビもついてないし音楽も掛けていないので、食器の音と自分の咀嚼音すらも大きく聞こえる気がする。
沈黙に耐えられなくなり、私は顔を上げた。

「レン、あの」
「すまなかった」

間髪入れずに謝られてしまった。
レンの食事はほとんど進んでいない。
彼もどう話そうか悩んでいたのだろう。

「謝らないで。
それよりマネージャーさんと話さなくて良いの?」
「今はプライベートの時間だ。
仕事はきちんとこなしている」
「そうかもしれないけれど」
「先に確認したいんだが、俺とミアの関係を疑ったりはしてないよな?」

彼の問いに言葉に詰まった。
レンが私を思っていることに疑いは無い。
だけどミアさんはどう思ってもマネージャー以上の感情を、恋愛感情をレンに抱いているのは確信した。
今は違っても、過去には交際していたことがあってもおかしくはない。

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