愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~
コンサートは無事初日を終え、観客が出口に流れていく。
レンはこの後すぐに明日の打ち合わせがあるらしく、私は素晴らしかったまた明日行くから早めに寝てねとメッセージだけして私も出口に向かった。
周りはレンの話題で溢れている。
素晴らしかった、明日も聴けたら良かったのに。
そして同時に聞こえてきたのは、レン・ハインリッヒ格好いいという女性達の声だった。
「やっぱさ、恋人くらいいるよね」
「そりゃいるでしょ、あのルックスで有名なんだし」
「相手はモデルかな、それとも同じ音楽家?」
「今の音楽家、美人が多いもんね。
私ならあの美形の隣に並ぶ勇気は無いよ」
たまたま近くの女の子二人が盛り上がっていた会話が聞こえて、私は最後の言葉に肩を落とす。
『私だって同感です』
内心で深く頷いた。
レンに出逢った時、最初は高校生に間違えられたくらいだ。
私が未だにそれを話題に出して拗ねると、レンは楽しげに私に甘い言葉を囁いてくるけれど。
谷本さんの言葉を弱気になる自分へ何度も言い聞かせつつ、またすぐに地味で取り柄の無い自分で良いのだろうかと自問自答を繰り返してしまう。
ホールの外に出て思いきり息を吐くと、人の波に乗っかり駅へと向かった。