愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~


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翌日土曜日。
開演は昼からでホールの入り口に行くと人だかり。
どうやらチケットを求めて人が集まっていた。
当日券が出てないのかなどスタッフに詰め寄り、警備員達が出てくるほど。
おそらく理由は昨夜のネット記事などによる反応だろう。
聞きに来ていた記者や一般人などの感想が、余計に聞きたいと煽ってしまったようだ。
チケット譲ってくださいという紙を持った人や、高額で買い取りますと声をかける人達まで出てきて、警備員が増え対応に追われていた。
私はその影響力に内心怯えながら入場した。

席に座れば案の定、外の騒ぎやネットの盛り上がりが話題になっている。
レンの記念すべき訪日一回目のコンサートは、既に伝説になりそうだ。
そんな中で私はこのコンサートが終わってからがむしろ本番。
彼女に答えを伝えなければならない。
だけれどまずはレンの音楽を楽しむのが先。
私は気持ちを切り替えることにした。

舞台に現れたレンの出で立ちは、昨日の黒と違い、明るい光沢のあるグレーのタキシード。
黒の細いネクタイを締めていて、初めて見る姿に思わずうっとりと見てしまう。
おそらくどんな姿でもレンは格好いい。
彼の醸し出すオーラは、ここのオーケストラ数十人よりも遙かに勝って見えた。

今回は管楽器から始まり、レンがふわりと鍵盤に指を落とす。
優しげな雰囲気から、一気に激しく。
オーケストラも合わさったが、今回は違った。
まるでレンが引っ張るようにオーケストラの音を大きくしているように思えた。
なるほど、こういう方法もあるんだ。
だけどオーケストラの皆さんはどんな気持ちでいるのだろう。
レンの表情は氷の貴公子と呼ばれるように、特に表情も変えずピアノを弾いている。
どうか彼のことを誤解しませんようにと、心の中で祈った。


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