愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~
レンの手が伸びてきて、腕の中に抱きしめられた。
「化粧がついちゃうよ」
「どうせ脱ぐ。
それよりも楓が逃げなかったことを実感したい」
私を抱きしめる力が強くなり、私は彼の背中に手を回し広い背中にしがみついた。
ずっと気が張っていた。
彼女が残ってくれ無い可能性を考え、今後のレンを思うと自分はいない方がいいと考え、でもそれはレンを裏切るとぐるぐる考えていた。
全部解決したわけじゃ無いけれど、まずは目の前の人に向きあわわ無ければ。
愛しい人へ、心から思う言葉を私は口にした。
「愛してる、レン」
「ここで言うのは反則だろう?
まぁ、ベッドのある場所で再度言って貰おうか」
顔を上げるとレンは密かに口の端を上げ私を見つめ、胸元についている音符のブローチを触った。
「今度は婚約指輪を用意しよう。
さて、どこで作ろうか」
「それは早くない?!」
「いいや?
楓には、俺の物だとしっかり自覚して貰わなければならないからな」
二人で顔を見合わせると、同時に笑って額を当てる。
「愛している、楓」
「私も、愛してる」
彼の顔が近づいて私は目を瞑る。
優しいキスは、新しい世界への一歩のように感じた。