愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~

*********


レンの日本でのコンサートが終わり約一年後。
私はレンと婚姻届を出した。
だが名前は変わらずに、篠崎楓のまま。
レンがレンのお母さんから苗字を変更した際の苦労を聞かされていたらしく、私の負担を気にしてくれてお言葉に甘え別姓を取ることにした。

結婚し、住まいも驚くほど立派な場所に変わった。
業務上内密にすべきなのか悩んだが、レンが隠す必要は無いと背中を押してくれた。
勇気を出して会社に報告し、それを聞いた安斉さんが驚きのあまり椅子から転げ落ちて腰を痛めるという伝説を作り出してしまった。
谷本さんからは、あの時の相談はそういう事だったんだとにやにやされたが、編集部の人達には心から祝福されつつ、結婚式の独占インタビューを欲しがられて困っていた。

レンは話していたとおり活動拠点を近々日本に移すのだが、その前に行われる単独コンサートがウィーンで行われる。
結婚式は日本で後日行う予定だが、私はそのコンサートを聞くためにウィーンに来ていた。

二年ほど前、会社が倒産し、半ばヤケになって一人海外旅行に飛び出した。
それ以来の海外旅行がまたウィーン。
まだ二回目なのに、なんだかこの街がとても懐かしい。

ホテルはレンの泊まっているあの時と同じインペリアルホテルになった。
部屋でぼんやり思い出に浸っているとレンが打ち合わせを終え、食事に行こうと私を部屋に呼びに来た。
そして二人で手を繋ぎ、夜の街を歩く。

< 86 / 88 >

この作品をシェア

pagetop