君にかける魔法
「モモ、急いでる?」
「あっ…」
ナツキに花火大会行くこと言ってなかった。
大体の経緯を説明し、青葉さんと行くことを伝えた。

ナツキの表情が一瞬曇る。

だがそれは一瞬で、ナツキは私の両手をぎゅっと握ってきた。

「モモ、可愛くならなきゃ」
「え、?」

「モモも、女の子なんだよ。ほら。」

タンスの一番下の段から取りだしたものを私の目の前にスっとだした。

「浴衣…」

「身長的に私の前着てたやつだから会うとはおもうし、柄は少し可愛すぎるとは思うけど」

薄ピンク
沢山のお花が散りばめられた綺麗な浴衣だ。

「絶対似合う!着るの手伝うし!」
「…そんなっ」

私は両手で全力拒否をする。
私は女の子らしいものなんて似合わない。
どちらかというと、妹に似合いそうな感じ…
「モモ…」

ナツキちゃんの真っ直ぐな目。

「モモは可愛い。私が保証する。」
「可愛くなんか、」

「自分を卑下しないで…っ」

顔を逸らした後、もう一度私の目を見つめる。

「私、ずっと可愛いって思ってたよ。素敵な子だって、ずっと…」

少し切なそうな目をするのは何故…

でも今はその真っ直ぐな瞳を信じることしか私にはできない。


「…ありがとう。じゃあ、…手伝ってもらおうかな」
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