君にかける魔法
自分の鼓動が少し高鳴る感じがした。
持ち合わせていたメイク道具と、ナツキの部屋にあったアイロンなどを借り、時間もないのでささっと準備をした。
実は自分に対するヘアメイクは初めてだった。
ベースがベースだからか、可愛いとは思えないけれど、少しだけ血色感が増した自分の顔が不思議な感じがする。

「可愛いよ」

鏡越しに、ナツキが右手で丸を作った。
私も丸を作った。

次は着付け。
時間が無くなってきた。
急がなければ…

「ごめん、そこ押えて」
「は、はい!」

ナツキのサポートを貰いながら、可愛らしい浴衣に袖を通していく。
少し手助けを借りれば、案外浴衣も着れるものなのだなと実感。

「おふたりさん、かっわいー!」

2人で玄関に向かうと、星川先生が自室から出てきた。
時間が迫っていて、のんびりしている暇がない!

「ごめんお姉ちゃん行くわ!」
「お、お邪魔しましたっ!!」

なれない浴衣では走ることなんか出来ないので、早歩きで花火大会の会場に向かった。

斜め前をスタスタと歩くナツキは、アニメや漫画でいう主人公そのものといった感じだ。
仲良くなったけれども、手の届かない存在のように感じた。
「もう少しだよ!」
笑顔で振り返る。

きっと、ナツキの恋は上手くいく。

そんな予感がしてた。

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