君にかける魔法

「ソノ、この日何か予定あった?」
「…バイトないです、何も無いと思います!」
「どこか行かない?」
「ぜひ!」

久しぶりのデートの約束をした。
こうやって忙しい合間を縫って時間を作ってくれる。
このことを周りに話すと羨ましがられる。
その様子を見て私は安心する。

これが正解。
これが幸せ。

そう自分を納得させる。



家に帰ってベッドに寝転がりながら、私はチケットを手に持ち、それを見上げる。

「お姉ちゃん、スマホお風呂場に置きっぱなしだったよー」
「ありがとー」

スマホを私にミコが部屋に入ってくる。
私の机にスマホを置くと、目線は私の手元に行く。

「何それ?」
「あぁ、これ、友達の部活の大会見にこないかって、チケットもらっちゃって」
「そうなんだぁ…聞いたことない大会」
「まぁチアダンスだからねぇ」

私も実際のところ、大会をやっているとかこの高校に入るまで知らなかった。
私の勝手な印象は野球の甲子園で応援しているチアガールってイメージで、ここまでキレッキレに踊ったりするんだと初めて見た時は驚いた。

「スマホ、忘れるくらい、そんなにチケット見る必要あるのー?」
「そんなことないけど。」
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