Cherry Blossoms〜思惑の交差点〜
一花は薬を盛られることを警戒しているものの、人は生きていくには水分と食べ物は必要不可欠である。さらに、「栄養のない血は売れない」と言われて強制的に水分や栄養を体に入れられるため、一花は夜は薬が効いているため、深い眠りの中だ。

地下室のドアがゆっくりと開いていく。一人の男性が、ゆっくりと一花が眠るベッドに近付いていった。

「一花……」

男性が発した声には、驚きと喜びが混ざっている。男性は一花の頰を優しく撫でた後、着ている白衣のポケットからあるものを取り出した。

ジャラリと音を立てたのは、複数の鍵がついた鍵束である。男性は鍵を一花を拘束している鎖に入れ、回していく。数秒後には微かな金属音を立て、一花を縛る全ての鎖が外れた。

「うまく逃げるんだぞ、一花」

注射器を男性は一花の腕に刺す。そして、迷うことなく中の液体を押した。液体の正体は睡眠薬の成分を殺す薬である。これを使えば、一花は朝になるまでに目を覚ます。

男性はもう一度一花の頭を撫でた後、部屋を出て行った。
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