Cherry Blossoms〜思惑の交差点〜
番外編二 大和撫子
その日、桜士は公安も病院の仕事も休みだったため、散歩がてら買い物へと出かけていた。今日は寒さも和らぎ、街を歩いている人の表情も穏やかである。

「困ります!通してください!」

聞き慣れた声が耳に届き、桜士は声のした方を見る。そこでは、派手な男性二人組が振袖を着た女性をしつこくナンパしているところだった。その女性を見た刹那、桜士の胸はトクンと音を立てる。

「四月一日先生?」

振袖を着ているのは、桜士が想いを寄せている一花だった。そんな一花は男性に今、乱暴に手を掴まれている。彼女はeagleメンバーとして武術の心得があるものの、振袖姿では抵抗ができないようだ。

「その女性は私の連れです。何かご用ですか?」

桜士は一花の手を掴んでいる男性の手を思い切り掴み、低い声で問いかける。突然現れた桜士に二人は驚き、すぐに「おい、行こうぜ」と言いながら走っていった。

「本田先生、助けていただいてありがとうございます。まさかこんなところでお会いするなんて……」
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