Cherry Blossoms〜思惑の交差点〜

一花は頰を赤く染めながらお礼を言う。彼女は、大きな花柄のピンク色の振袖を着ていた。髪は一つにまとめられ、ピンク色の花の髪飾りがつけられている。ピンクの振袖は彼女によく似合っている。だが、今日は成人式の日などではない。

「四月一日先生、どうしてそのような格好を？」

まさかお見合いでは、と桜士は内心緊張を覚えながら訊ねる。一花は「これですか？」と振袖を見て言った後、ニコリと微笑む。

「今日は従姉妹の結婚式だったんです。せっかくだからと祖母が着付けてくれて……。この格好の写真をヨハンたちに送ったら、「せっかくだから見せて」と頼まれて、ヨハンたちに見せに行く途中だったんです」

お見合いなどではなかったことに桜士はホッとする。そして、その気持ちを気付けば伝えてしまっていた。

「よかったです、お見合いなどではなくて……」

「えっ？お見合い？」

キョトンと首を傾げる一花の頰に、桜士はそっと触れた。一花の頰は少し冷たくなっている。