【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
最後尾のエイドリアンが私に振り向いたから、頷いて少しだけ微笑んで見せた。
彼はお飾り王太子妃ルートに進んだ場合、あのひとが駄目だったら行こうかな、の攻略キャラだから、ちょっと愛想良くしとかないといけない。


「ブラン先生も……
 ご協力、どうもありがとうございました」

私がさりげなく、貴方ももう行って欲しい発言をすると、先生はギロリと睨んでくる。


「俺様を適当にあしらいやがって。
 この次は……」

金色の瞳が妖しく光って、先生が私に手を伸ばしてくる。
魔王の色気が半端なくて、傍らのブリジットが「ひいっ!」と短く声をあげた。
これだから全年齢向けゲームしかしたことがないヤツは。

私の唇に伸ばそうとしていた手を、ノワールは止めた。
私は彼の瞳を見つめながら笑顔になる。


「無詠唱でバリアを張ったか?」

「何の事だか」

ノワールは私を、特別に想っている。
自分の名前を呼ぶのが、私だけだから。


『◯◯◯◯◯◯』

それは、第6天魔王と名乗った戦国武将の名前。
貴方の名前は、私が日本語で名付けたから、この世界では私以外知らないし、発音も出来ないのよ。
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