【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
「噂は彼女の耳にも入っているの?」

「口には出されませんが、恐らく……」


嫌だなぁ、僕にも聞かせないで欲しかったな。
何で聞かせたの、ドミニク?
僕達兄弟にはその名称『悪役令嬢』は、禁句なのにさ……


「つまり……誰もあの女の嘘を信じていないのに、噂だけは回っているんだね?
 留守の兄上にはともかく、僕にもそれを聞かせないように噂されていたのに、どうしてドムは僕に言ったの?」


ついつい恨みっぽく言ってしまう。
ドミニクが腹黒なのは、所謂幼馴染みだから知っていたけれど、年下の僕には優しかったのに。


「リシャール殿下のお帰りは週末でしょう?
 モンテール侯爵令嬢と会われる前に、殿下のお耳に入れておいていただけないかと」

「……今、流れている噂については、どうするの?」

「どうもこうも。
 誰も信じていない話です。
 ビグローだけが被害者面しているだけですからね。
 皆はそれを面白がって、相手にしているだけ」

「それでも、悪役令嬢なんて言われて、クロエ嬢は傷付いていると思うよ。
 兄上だって、噂を知ってて放置した君や僕を許さないだろう」

「……動きますか?」

「舐めるなと、あの女に釘を刺すくらいは、ね」


クロエが傷付いている、そう言われたらドミニクだって動く。
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