【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
こいつは何年か前から、兄上に命じられたなら動きます、みたいな感じになっていた。
今回も来週早々に噂を知った兄上からの指示を受けて動くつもりだったんだろうけれど。

それでは遅いよね。
自分がクロエの事で勝手に動いたら、兄上が嫌がるからだろうけどさ。
今回はいいんじゃないかな。



ドミニク・フランソワは兄上の婚約者が好きだ。
そして、僕も。

僕も彼女を愛している。


銀色の背中まで伸ばした髪も。
深い夜の紫の瞳の色も。
透き通る白い肌も。
声も、手も、香りも、何もかも。
彼女を愛している。



初めて会った8歳の頃からだ。
彼女と兄上は10歳だった。
王城で開かれた王子達と高位貴族の子供達を集めたティーパーティー。
この年代は僕達に合わせて生まれた子供の数は多かったが、彼女は断トツに輝いていた。


「クロエ・グランマルニエ、可愛いね?」

「あぁいうのが、シャルルの好みか?」


僕の前では彼女のことは興味がないように言っていたのに、兄上は隠れてクロエとの婚約を両親に頼んでいたし、黙ってひとりでモリエール侯爵邸へ遊びに行っていたんだ。

そしてふたりは、11歳で婚約した。


僕と彼女の間には何もなかったけれど、これが兄上のやり方かと、思った。

そうだ、何もなかった……何も。
だから、こんな気持ちを未だに持ち続けていることは、兄上には絶対に知られてはならない。

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