魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

「あの……大丈夫?」

 人形相手に声をかける。
 凄く苦しそうだったけど、大丈夫かな?

 すると、ぐったりしていたシャルロッテは

「ありがとう。あなた、とても勇敢なのね」
「ゆうかん?」
「男らしくて、カッコイイってことよ」

 そう言って、ゆっくりと立ち上がったシャルロッテは、とても綺麗に笑っていた。

 見た目は、小さくて可愛いお人形。それなのに、その姿は、とても綺麗でカッコよくて。

 だけど──

「俺は……っ」

 嬉しいはずのシャルロッテのその言葉に、俺は、申し訳なさそうに俯いた。

 裁縫が趣味で、可愛いものが大好きな俺は、男らしくも、カッコよくもない気がしたから。

「俺は、男らしくないよ……全然」
「?」

 ポツリと呟けば、シャルロッテは不思議そうに首をかしげた。

 この人形も、笑うのかな?

 俺が本当のことを言ったら、あの時みたいに、また笑われるんだろうか?

「……それより、あなた大丈夫なの?」
「え?」

 すると、またシャルロッテが話しかけてきて、俺は首を傾げる。

「え? 大丈夫って、なにが……」

「この屋敷には、人間よけの結界がはってあるの。だから、人間が屋敷の中に入れば、異臭や吐き気に見舞われて、一分ともだずに逃げ出したくなるわ」

「ええ!?」

 結界!? じゃぁ、本田くんが言ってたアレは、結界がはってあったからなんだ!?

「あれ? でも、俺は、なんとも……」

「そう。アラン様と、波長が似てるからかしら?」

「波長? あ、そうだ! そのアランって」

「アラン様は、私達の主人(あるじ)よ。魔界をすべる魔王様のご子息にして、王位継承権をもつ魔界の王子──アラン・ヴィクトール様」

「ま、魔界の王子……様?」

 するとシャルロッテは「ついてきて」と言って、俺を奥の部屋にみちびいた。

 赤い絨毯の敷かれた廊下を、ひたすら進むと、広々とした部屋に通される。

 すると、その中には、男の子がいた。

 アンティークのソファーに横たわって、静かに眠っていたは、俺と同じ年くらいの、とてもとても綺麗な男の子だった。
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