忘れえぬあなた ~逃げ出しママに恋の包囲網~
彼女に起きたこと Side尊人
最近、沙月の様子がおかしい。
仕事中も何か考えごとをしているようだし、時々ため息をついたりもする。
今のところ仕事は大きなトラブルもなくこなしているかが、何か悩みがあるのかもしれないと俺は気になっていた。

「そういえば、昨日のメール返信してくれたか?」
たしか、取引先への返信を急ぐと伝えていたはずだが。

「あ、すみません。すぐに」
慌ててパソコンを叩きだす沙月。

ほら、こんな調子だ。

「なあ、何かあったのか?」
仕事の手を止めて、俺は沙月の前に立った。

「すみません、何でもなりません」
「本当に?」
「ええ」

嘘をつけ。何もないはずがないだろう。
集中力は全くないし、何か心配事を抱えているのは明らかだ。

「もういいから、今日は帰れ。ひどく疲れた顔をしている」
「大丈夫ですから」
「大丈夫じゃないから言っているんだよ。いいから帰れ」

決して怒ったわけではない。
ただ、意固地な彼女の態度が俺をイラつかせた。
今日はこのまま帰らせて、家でゆっくりさせてやろう。
どちらかと言うと、彼女を思って出た言葉だった。
しかし、
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