忘れえぬあなた ~逃げ出しママに恋の包囲網~
偶然のような接近
時刻は朝の8時50分。
約束していたのとは違う駅にいきなり現れた尊人さんに連れられ、私達は駅前のハンバーガーショップに入っていた。

「まま、あそんでいい？」
「いいわよ」

店の中には子供が遊べるスペースがあって、大きな遊具も置いてある。
普段は滅多に連れてきてあげられないけれど、凛人はここが大好きだ。
案の定、少しポテトを食べただけですぐ遊びに行ってしまった。

「子供、いくつ？」
深い意味があるのかないのか、尊人さんが聞いてきた。

もしかして自分の子供だと気が付いたんだろうか？いや、まさか。
もし気づいたのならこんなに淡々としてはいられないはずだ。

「3歳くらいかな？」
なかなか答えない私に、尊人さんはさらに問いかける。

「え、ええ」

本当は4歳だけれど、３歳ってことにしておこう。
そうすれば尊人さんと別れた後にできた子だと思ってくれるかもしれない。
私は咄嗟にそんなことを考えた。

もし、凛人が自分の子供だと知ったら尊人さんはどうするんだろう。
喜んでくれるとは思わないけれど、かわいがってはくれるかもしれない。
そして、凛人自身もお金に苦労することのない幸せな人生が送れるのかもしれない。
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