秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
二十二本の薔薇



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結愛に手を解かれ、しばらく俺はその場に立ち尽くしていた。

カウンターから感じる強い視線に我に返ると、喫茶店の店員が興味深そうに俺を凝視していた。

冷静さにかける行動を恥じながらも、もう一度席に着く。

マグカップの取っ手を持つと、冷えたコーヒーの水面には、浮かない自分の顔が揺らめいていた。

結愛に子供がいるとは、夢にも思っていなかった。

ショックとは違う、信じられないという感情の方が近いかもしれない。

詳しくは聞くことができなかったが、彼女はひとりで子供を育てているということだろう。

結愛が母親。

ぼんやりと過去の記憶を辿る。

無邪気に笑い、素直に涙を流す結愛はまだ若かった。

再会した彼女は落ち着き払っており、大人の女性に変貌していた。

けれど、目の輝きはあの頃のままだった。

自分と離れている三年間、どんな美しい景色を見て、どんな喜びを感じたのだろう。

彼女の隣で、自分も同じように感じたかった。

人の移り行く心とは無常だ。

別の男が彼女と幸せを共有し、子を成していたとは……悔しくて堪らない。
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