悪役令嬢にならないか?
「ああ」
 ウォルグが大きく頷いたが、リスティアはどことなく不安であった。
「ところで、立派な悪役令嬢になるためには、どのようなことをすればよろしいのでしょうか? ヒロインを孤立させるためには、悪役令嬢に多くの女性の取り巻きが必要です。それに、ヒロインを苛めるためにも、相手に知られないように階段から突き落とすとか、教科書を盗むとか、虫を入れるとか。そういった機敏な動きが求められると思うのです。それに、婚約者は……」
 それがウォルグから借りた本に描かれていた物語の中の理想の悪役令嬢である。メルシーから借りた本も、悪役令嬢とは似たようなものであった。そして、最終的には婚約者から一方的に婚約破棄を突きつけられるのだが、その後は幸せな人生を送っている。
「その辺も僕に任せて欲しい」
 ウォルグが熱く見つめてくる。
「わかりました。わたくしも精一杯、頑張ります」
 リスティアはそう答えるしかなかった。
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