悪役令嬢にならないか?
「私も、ウォルグからリスティア嬢の話をいつも聞いていますのよ。いつ会わせてもらえるのかと、楽しみにしておりましたの」
 そう言った王妃は、ウォルグによく似ていた。彼の艶のある髪は、母親似なのだろう。
 今日のこの集まりの名目は王妃主催のお茶会である。しかも、招待されたのは学園に通う令嬢たちだけであり、その中でも名だたる家柄の者だちだけだ。
 王妃は定期的に茶会を開いては、学園に通う彼女たちから話を聞いているらしい。定期的といっても年に数回程度で、その茶会に招待される令嬢の人選にはエリーサも携わっているとのこと。
「リスティア様は、いつも難しい本を読まれていて。お邪魔をしてはいけないと思っておりましたの」
 一人がはにかみながら口にする。
「どのようなご本を読まれているのですか?」
「リスティア様。よろしければ、少し歴史学を教えていただきたいのですが」
 一人がきっかけとなり、リスティア様、リスティア様と、教室では喋ったことのない彼女たちから次々と声をかけられる。
 そうなればリスティアとしては目を白黒させるしかない。
「みんな、リスティアとお話をしてみたかったのよ。だけど、あなたはいつも本を読んでいるから。別に、休み時間に本を読むのが悪いとは言っていないのよ。例えば、そう、例えばよ。お昼ご飯を一緒に食べるとか、夕飯も食堂で食べるとか。そういったことをしてもらえると、お話できる機会が増えると思うのよね」
 エリーサの言葉に、他の令嬢たちも頷く。
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