悪役令嬢にならないか?
 そのエリーサは倒れそうになる身体をウォルグに支えられるようにしながら、なんとか立っていた。
 これから学園の卒業パーティーが行われようとしていた。学園の卒業生と在校生、さらに関係者が王城の大広間に一同に集まり、卒業生の門出を祝う催しものである。
 そこに現れたのが、ミエルを伴ったアルヴィンであった。
 彼はこの学園の既卒者であり、さらに王族関係者としてパーティーに出席する。本来であれば、婚約者のエリーサをエスコートすべき彼は、なぜかミエルと共に会場に現れた。
 そんなエリーサを支えるようにして隣にいるのは、ウォルグである。
 リスティアの胸の奥がチクリと痛んだが、痛みの原因はわからない。ただ、隣にいる兄の腕を掴んでいる手に、つい力を込めてしまった。兄のこめかみがひくっと動いた。
「理由を聞かせていただいても、よろしいでしょうか?」
 今にも倒れそうなエリーサであるが、力強い口調で問い質す姿は凛としている。
「理由? それは君が一番わかっているのではないか? 力ないミエルを陥れるようなことをしたのは……。エリーサ、君ではないのか?」
 アルヴィンと対峙するエリーサを黙って見守る。まだ、その時ではない。
 もう少し話が進み、断罪が始まったら悪役令嬢の出番である。むしろ、断罪されるのは悪役令嬢でなければならないはずなのだが、この流れではエリーサが悪役令嬢に見えてしまうだろう。
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