あの日ふたりは夢を描いた
最後の締めはもちろん線香花火。

徐々に減っていく花火にお互い寂しさが溢れていた。

『また来年、できたら嬉しいね』

彼女がそう言った。

『来年かぁ。どうだろうなぁ、先のことはわからないからね』

……ポジティブな言葉はかけられなかった。

ごめん。叶えられない約束はしたくないんだ。
これ以上、変に期待はさせられない。

『まぁ、そうだよね』

寂しそうな顔をした彼女に申し訳なさが募った。

最後の一本になったとき、普通にやっても面白くないからと、『早く落ちた方が負けゲーム』なんていう、とてもありきたりなものを提案してみた。

正直、線香花火でこれ以外は思いつかなかったから。

罰ゲームをつけると彼女はあまり乗り気じゃなさそうだったが、しぶしぶ了承してくれた。
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