あの日ふたりは夢を描いた
きみと初めて言葉を交わすことになったのは、あの屋上が最初だった。

『僕はきみを知っている』

きみに自分の思いと感謝を伝えたくて、でも初対面でまだ早いんじゃないかという気持ちもあって、こんな言葉で濁した。

当たり前だけどきみはぽかんとした顔で僕を見つめていた。

高校二年生になってきみと同じクラスになれたこと、そして化学室にきみがノートを忘れていったのは、きみに近づくためのきっかけを、神様が僕にくれたのだとさえ思っている。

ずっと憧れていたきみがいつも大事そうに抱えていたノート。

一体どんなことが書かれているんだろうと以前から気になっていて、駄目だと思いながらも少し開いて読んでしまったんだ。

今思えば、中に入ることを禁止されている部屋を覗いて見たくなる感覚とよく似ていたのかもしれない。
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