あの日ふたりは夢を描いた
彼女は無駄のない動きで次から次に自転車を元に戻すと、「あ、ちょっと……」という僕の声を聞いてか聞かずか、足早にささっとその場を離れていってしまった。

「相変わらず、きみはヒーローみたいな人なんだね……」

僕は去っていくきみの背中を見つめながら、無意識にそう口にしていた。


そして僕は次の日の昼休み、いつも一人でいるきみを探し出して、「昨日はありがとう」とそう声をかけた。

『一体なんのこと……?』そう言いたげな瞳をしていた彼女に昨日のことを話し、無理を言って一緒に食事もした。
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