「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
「アイッ」

 アポロニア・シュレンドルフが叫んだ。

 あいかわらず美しすぎる。そして、謙虚と慈愛の塊みたいなオーラを発している。

 ブロンドのサラッサラの長髪は、枝毛やくせ毛がまったくなさそう。夏の空の色と同じ蒼色の瞳は、皇太子コルネリウス同様吸い込まれそうなほど美しい。顔の造形も同様で、美しいコルネリウスにまったくひけをとらない。ほんのちょっと小柄なのは、それだけで可愛い。

 彼女を皇太子コルネリウスの隣に立たせておけば、超美男美女としてどこに出してもひけをとらない。自慢出来るカップルというわけ。

 なにより、二人は愛し合っている。

 アポロニアもまた、親衛隊の隊長フリードヒ・シーゲル同様に子どもの頃からの付き合いである。

 二人は、子どものときからずっとずっと愛し合っている。

 そして、アポロニアこそがこの世界、ヴェルツナー帝国の皇宮においてのヒロイン。

 この世界での物語は、彼女を中心に進んで行く。

 当然、ラストはハッピーエンド。美貌の皇太子コルネリウス・ユーヴェルベークと結ばれ、だれからもうらやましがられるというわけ。

 わたしは、この筋書きを確実なものとする為にここにやって来たのである。

 余命三か月。死ぬまでの間に唯一やりたいこと。それが、二人にハッピーエンドをもたらせること。



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