「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
 ちなみに、アポロニアはわたしより年長である。それだけでなく、彼女は外見の美しさと中身がほんのちょとズレている。つまり、残念な状態である。

 相手のステータスや年齢に関係なく、じつにざっくばらんな付き合い方をする。

 一方、いまやぬれねずみと化したカサンドラは、赤橙色の巻き毛から水をしたたらせかたまってしまっている。

 髪は、もともとくすんだブロンドだったのを、巷で流行っている染毛をしている。最近、貴族の一部で他国の商人から仕入れたというヘンナで、髪や眉を染めることが流行っているらしい。みんながその流行にのっていて、彼女もその一人というわけ。

 このまさかの展開に、だれもが声もなく立ちすくんでいる。

 全員に注目されているのを感じつつカサンドラににっこり微笑んでみせた。
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