「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
「殿下がなにもしてくださらないというのでしたら、お父様に頼みます。ヴァレンシュタイン公爵家は、このことを正式に訴えます。そして、シュレンドルフ伯爵家と客殿付きの侍女を処分していただきます」

 彼女は、アポロニアと彼女に寄り添っている侍女を指さした。

 さて、そろそろ「孤高の悪女」の出番かしら?

 乗馬ズボンのポケットに手を突っ込むと、それを握りしめた。

「カサンドラ。あなたが盗まれたという宝石ってこれでしょう?」

 全員の注目を浴びるのっていつでも気恥ずかしいわよね。

 全員の目が見守る中、ポケットから手を出すとそれを閃かせた。

 握っていたものがすごい勢いで飛んでいき、カサンドラの自慢の顔にあたった。

「痛いっ」
「それはそうよ」

 痛がった彼女を、冷静に肯定してあげた。
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