「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?

「イエス、イエス、イエス」

 やって来た正装姿の男性は、ヴァレンシュタイン公爵家の執事らしい。おどおどした態度でカサンドラに近づくと、耳うちした。

「な、なんですって? お父様は来てくれないってどういうことなの?」
「それどころではないそうです。公爵閣下は、もっと大事なことで頭を痛めていらっしゃいます。お嬢様には、『とっとと戻って屋敷でおとなしくしていろ』、と」
「そんなはずはないわ。娘のわたしより大事なことっていったいなんだというの?」
「ヴァレンシュタイン公爵家の家名にかかわることです。さぁ、お嬢様。公爵閣下のご命令どおり、屋敷に戻りましょう」
「嫌よ。ちょっとあなたたち、どうにかなさい」

 カサンドラは、執事を困らせている。その上、自分の取り巻きたちにどうにかしろと無茶を言いだした。

「ヴァレンシュタイン公爵令嬢、どうにも出来ません。わたしたちは、せっかくですからもうしばらく宮殿での生活を満喫するつもりです」

 はっきりきっぱりすっきり応じたのは、カサンドラに命じられてアポロニアに花瓶の水をぶっかけたフローラだった。他の取り巻きたちもカサンドラに味方するつもりはないらしい。

「あなたたち、覚えていなさいよ」

 そして、カサンドラは捨て台詞を残して去って行った。

 彼女とヴァレンシュタイン公爵家の執事の姿が見えなくなったとき、拍手が沸き起こった。

 この場にいる全員が、程度の差はあれ溜飲を下げたみたい。

 それこそ、「ざまぁみろ」よね。
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