「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
「お、お嬢様っ、そ、そんな……」

 わたしのあからさまな嫌味、というよりかは侮辱に、彼女は泣き始めてしまった。

 ふふん。まさかこれが最後の「ぶちかまし」になるとは思わなかったけれど、まんまと驚いて泣いてくれたのだから、よしとしましょう。

 これで心おきなく皇宮に行ける。

「鬱陶しいわね。用事が終わったのなら出て行ってちょうだい」

 邪険に追い払おうとしたけれど、彼女はグズグズといつまでも泣き続けていた。



 お父様たちが夕食中の間に、屋敷をこっそり出て行こうとした。

 いままさに玄関を出て行こうとしたとき、お父様たちが追いかけてきた。

「アイ、どうしたというのだ?」
「アイ、いきなり皇太子妃の修行に加わるだなどと、あんなに嫌がっていたのに」

 奥の廊下から、お父様と継母と異母兄が現れたのである。

 どうやら使用人のだれかに見られてしまい、お父様たちを呼びに行ったらしい。

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