闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「あら珍しい。陸奥先生のお怒りの表情、なかなかカッコいいじゃない」
「話、を、そらすな!」

 顔を真っ赤にして怒鳴りつければ、ごめんごめんと真顔に戻り、加藤木は声を落とす。
 
「患者として彼女を救うことは簡単だけど、それは真の意味での救いにはならない、ってこと」
「……救い?」
「そ。諸見里くんはどんな道を選ぶかねぇ~」


 話はもう終わりだと加藤木がしっしっ、と手を振るので陸奥は不貞腐れながら部屋を出ていく。
 その向こうに、ピンク色の白衣を着た女医の姿があることに気づくことなく。


「あら、赤根センセ。珍しいですね~、こんなところまで」


 けれど加藤木は気づいていた。
 そしてあえて楢篠天のことを赤根、と口にする。
 
「――どこまで知っている?」

 凛とした佇まいの美人医師は単刀直入に問いかける。
 加藤木はへらへらした笑みを浮かべながら、媚びるように言葉を紡ぐ。
 
「えぇ~。貴女に告げたところでメリットがないですよぉ」
「何を望んでる」
「話が早くて助かるわぁ」

 ばさりと言い捨てる天に、加藤木がにやりと笑う。
 
 
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