闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「諸見里自由の母親について。かつて家庭教師をされていた赤根センセならご存じですよね?」
「それを知ってどうする?」
「そうですねぇ、貴女の復讐を手助けしてあげてもいいですよ?」


 復讐、と口にする加藤木を見て、天はきゃははとふだんとは似ても似つかない甲高い声をあげる。
 その場違いな声を耳底に落としながら、加藤木は告げる。
 
 
「……赤根家と訣別したのは事実みたいですねぇ」
「そんなのとっくよ。こそこそ何を嗅ぎまわっているのかと思えば、今更コデマリの身辺調査?」
「みたいなものですね。蘭子が眉唾物よと口にしてましたよ。あんなのが“諸神(もろがみ)”の“女神”が産み落とした“器”だなんて、って」

「――ときどき貴女の情報収集能力が恐ろしくなるわ」

「それは光栄です」
「ほめてないぞ」
「前世は密偵(スパイ)でもしてたんじゃないかと自分でも思うのです。医師探偵加藤木羚子ってかっこよくないですかぁ?」
「……前言撤回。陸奥先生と同期の人間ってどいつもこいつも癖がありすぎ」
「光栄です」
「だからほめてないって」


 呆れる天を前に加藤木はにこにこしている。
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