闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 彼女がどういう立場の人間か理解できない天は、怪訝そうに彼女を見据える。
 視線を交錯させながら、加藤木は天の前で表情を改める。

 
「……それじゃあ、楢篠先生は、誰の味方なんですか」
「誰の味方でもないわ」


 もう赤根の家とも断絶したし、桜庭財閥や亜桜家のごたごたにつきあう筋合いもない。
 けれど赤根天という人間だった頃、彼女は過ちを犯している。自由と小手毬の仲に亀裂を入れるという過ちを。
 だからいまは、贖罪の意味も込めて、見守る立場を貫こうとしているのだ。
 加藤木からすればそれ自体が復讐なのかもしれないが。
 
 
「そうですかー。わたしは亜桜小手毬が救われればそれでいいです」
「とんだ偽善者ね」
「貴女こそ~」


 腹黒い微笑を浮かべてふたりは互いの持ち場へ戻っていく。
 今度こそリハビリ室は、静かになった。
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