闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
   * * *
 
   
「誰の差し金だと思いますかぁ?」

 理事長室を辞した直後、加藤木が小声で陸奥に問えば、陸奥はつまらなそうに応える。

「知るか」
「茜里総合病院って医療法人廻庭(かいば)会系のグループ傘下ですよねぇ。桜庭財閥から借金して病院建てて大儲けした」
「……また桜庭財閥か」
「いえ。財閥は既に病院事業から手を引いていますよ。ただ、彼女の身柄をそちらに移したい何者かが接触を図ったのでしょう。白井理事長も亜桜小手毬が自傷行為をしたのを知って、転院の件を打診したみたいですから」
「ならばなぜ俺と加藤木が派遣される?」
「彼女の精神状態を悪化させないためでしょうねぇ。茜里第二って、第一の外科内科病院と違って精神科一色の特殊病院ですから。いきなり見ず知らずの場所に放り込まれた彼女を驚かせないためにも陸奥先生とわたしが必要だと先方が要請したのでしょう……たぶん」
「ふん」

 加藤木の話に耳を傾けつつ、陸奥は小手毬の病室へ歩みを進めていく。

「あと――敵は諸見里自由と亜桜小手毬を引き離したいんだと思いますよぉ」
「は?」
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