闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 陸奥と加藤木とともに、茜里総合病院へ転院の手続きを終えた小手鞠は、これから自分が治療にあたるための第二病棟に向かっているところである。
 上空から見ると蜻蛉の形をしているという総合病院のメイン棟は手入れが行き届いていて、築年数の割りには古さを感じさせない。
 その、渡り廊下を挟んだ先……通称茜里第二病院と呼ばれる特殊病棟は、最近になって増築したのか、蜻蛉病院と呼ばれるメイン棟と比べてこざっぱりとした外観である。

「もっと小汚ないところを想像してたけど、良かったわ」
「加藤木、さっきからお前は……」
「荷物を置く際に職員寮も見てきたけど、至れり尽くせりじゃない? 病院というよりホテルよあれ」
「……まあ、私立の病院だからな」

 あくまでも公立である地域医療センターと比べればその差は歴然としている。小手鞠の入院療養の諸費用については亜桜家が引き続き出しているとのことだが、桜庭財閥からの援助を打ち切られてからこちらの病院に移されることになったことを考えると、陸奥としては複雑な心境である。
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