闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「どこまで信じるかは先生次第です。ただ、俺はこの異常な家庭環境でずっと生きてきたので……諸神はいると、信じてます」

 自由の弱々しい発言に、早咲は何も言わなかった。
 もしここにいるのが陸奥だったら、なんと返されただろう。
 小手毬は転院先で、陸奥とうまくやっていけているのだろうか。茜里病院なら、小手毬を粗雑に扱うことはないはずだが。

「あと、承知かもしれませんが。小手毬も亜桜家の血を引いてます。だから“諸神”を宿していた雪之丞が死んだことで、次代の守護を選ぶ巫として神を宿す“器”になったとされます。だから彼らはいまもなお、必死になって彼女を生かそうとしているんです」

 ふふ、と自嘲するような笑みを浮かべて自由は呟く。雪之丞が死んだことで、小手毬は死ねなくなってしまった。けれど自由には好都合だ。
 彼女が生きていれば、“諸神”を手元に呼び寄せることができる。“器”を覚醒させるためには、あることをしないといけないが……

「そうか」

 早咲は気の毒そうに自由を一瞥してから、部屋を出ていった。でもそれは医療者である自分には関係のないはなしだと、暗に言い捨てて。
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