闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 小手毬の母も女神として雪之丞に“諸神”の加護を与えていたのだろう。諸見里本家の人間のなかにも“諸神”の加護を受けたものはいるが、女神の最大加護を雪之丞に奪われて以来、表だって口にすることはなくなった。亜桜家の女児は“器”になる資格を持つが、なかでも長女が持つちからが抜きん出ているそうだ。
 自由の母も親族からは女神と呼ばれていたが自由の父に雪之丞のような加護を与えられたかと言うと、そうも思えない。

 ――けど、親父は彼女がいなくなってからも平凡で、とんでもない悪運に見舞われることもない。俺も挫折をほぼ知らない。

 思い込みかもしれないが、諸見里本家から距離を置いている自由たちは平凡な暮らしを謳歌できていた。小手毬という異分子に父はよい顔をしていなかったが、自由が女神にのめり込むのではないかと危惧していたからだと今なら思える。すでに時遅しだが。

「ジユウ、相変わらず辛気くさい顔してるわね」
「先輩に言われたくはないです」
「また囚われのお姫様について考えていたんでしょ。飽きないわねぇ」
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