闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 小手毬から報告を聞いているという加藤木は、陸奥を自由の代わりにして慰めてもらっているのだろうと理解した。そう言われて、はじめて陸奥は彼女が誰よりも自由を求めていることに気づいたのだ。

「やっぱり――この病院はおかしいな」
「今になってそれを言いますか」
「ああ。俺も危うく……毒されるところだった」

 すでに小手毬は交通事故の後遺症もほとんどない。陸奥が痛み止めを処方する頻度も少なくなった。
 本来なら退院して通院させればいいものを、茜里第二病院などという小手毬以外患者の存在しない閉鎖された病棟に、彼女は保護されたままだ。そのうえ、医療行為と称した不埒な行いを嬉々として受け入れている。これのどこがおかしくないと言えよう。

「保護しているというより、監禁している、って感じですかねぇ」
「それでも彼女が受け入れているところが解せない」
「生まれたときからどっぷり亜桜家でそうあるよう育てられたご令嬢ですよ、自分が雪之丞のおじさんと約束して“器”になったことを誇っているんですから」
「幼少時からの洗脳か」
「諸見里の一族からすれば因習になるみたいですけど」
「赤根一族ではなくて?」
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