闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
* * *
定時の合図とともに白衣を脱いだ楢篠天は、ようやく沈み出した夏の西陽から逃れるように病院の裏口から歩を進めていく。
午後六時。すでに外来診療は終わっており、入院棟には夜勤の医師が入っている。夫の健太郎は準夜勤ゆえ、いまも病棟内を駆けずり回っていることだろう。
「……暑」
外に出れば、どこにでもいるような会社員に見えるであろうチャコールグレーのパンツスーツ。冷房対策に薄手のジャケットを羽織っていたが、外はまだ日中のムンとした暑さが残っていた。すこし動くだけで汗が出てくる。
ひとりで家に戻ったところで、簡単な夕飯を食べて泥のように眠ってしまうだけだ。たまには本屋に寄り道でもしよう、そう思って駅までのバスに乗る。バスのなかは冷房がつけられていたが、部活帰りの学生たちが同乗していたこともあり、あまり涼しくなかった。十七、八歳くらいの高校生たちを見ていると、六月に十九歳の誕生日を迎えた小手毬のことを思い出してしまう。あれから彼女は元気だろうか。自由が姿を消したことでようやく諦めがついたと、そう思いたいけれど……
「っ!」
定時の合図とともに白衣を脱いだ楢篠天は、ようやく沈み出した夏の西陽から逃れるように病院の裏口から歩を進めていく。
午後六時。すでに外来診療は終わっており、入院棟には夜勤の医師が入っている。夫の健太郎は準夜勤ゆえ、いまも病棟内を駆けずり回っていることだろう。
「……暑」
外に出れば、どこにでもいるような会社員に見えるであろうチャコールグレーのパンツスーツ。冷房対策に薄手のジャケットを羽織っていたが、外はまだ日中のムンとした暑さが残っていた。すこし動くだけで汗が出てくる。
ひとりで家に戻ったところで、簡単な夕飯を食べて泥のように眠ってしまうだけだ。たまには本屋に寄り道でもしよう、そう思って駅までのバスに乗る。バスのなかは冷房がつけられていたが、部活帰りの学生たちが同乗していたこともあり、あまり涼しくなかった。十七、八歳くらいの高校生たちを見ていると、六月に十九歳の誕生日を迎えた小手毬のことを思い出してしまう。あれから彼女は元気だろうか。自由が姿を消したことでようやく諦めがついたと、そう思いたいけれど……
「っ!」