闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
* * *
淡々と日々が過ぎていく。
忙しさが心を殺す。日に日に、自由の中にいる小手毬の姿がちいさくなっていく。
近くにいるのに遠い存在。
彼女だけが患者ではない当然の事実。
「諸見里! 足を持て足っ」
はりつめた緊張感にひたすら耐えて、彼は経験を積み上げていく。同じように見えて、少しずつ異なる毎日。やがてそれもループを描くようになってしまうのだろうか。
「はいっ」
考え事はすぐに霧散する。
現実という呆気ない重みに押しつぶされて。
身を削るような痛みなどこれっぽっちもない。
まだまだ自分にはやるべきことがある。
その一心で彼は自分の道を信じてここまで辿りついた。
たとえそれが茨に囲まれた険しさを伴うとしても。
破滅する前に、救い上げてやる。
――目覚めさせられない王子だなんて、もう言わせない。
諸見里自由。
今年の医師国家試験を難なくパスした彼は、現在、整形外科で研修中の、新米医師として働いている。
……小手毬がいる、病院で。