闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 ふたりを射すように雷光が閃く。


「――彼女を医師として救うのは、俺だ」


 陸奥ははき捨てるように、憤りを隠さない自由に告げる。
 怯むことなく、この青二才が、と睨みつけながら。


「現実を知れ。それから、動け」


 再び、雷。
 自由は黙り込む。雨音と雷鳴が響く。灰色の雲間から、薄紫の空が覗く。けれどもすぐにかき消される。この雨はいつまで続くのだろうか。苛々する。陸奥は舌打ちをする。だがそれも外の音に隠され、彼の怒りは自由に届かない。


「……に」


 押し殺したような自由の声が、薄闇の中、陸奥の耳元へ浸透する。


「何も知らないくせに!」


 雷鳴に負けないくらい大きな声を張り上げて、自由は言い返す。
 負け惜しみでもいい。
 彼女に対する気持ちだけは誰にも負けない。

 彼女を救うのは自分だ。それがたとえ思い上がったエゴであっても。今度こそ。


「落ち着け。患者の前だ」

 陸奥は迫力に圧され、一歩、後退する。

「僕が、どんな気持ちで、ここまで来たか、あなたは知らないでしょう?」
「ああ、知らない」


 きっぱり言い切り、続きを待つ。
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