闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「研修医が病院にいるのは、当たり前のことじゃありませんか」

 また、稲光。続けて雷鳴。近い。

「研修医だったのか?」


 言われてみれば納得できる。
 医大附属の病院に入院している小手毬をしょっちゅう見舞いに来ることができたのは、彼がそこの学生であったからなのだろう。

 ……逆に、十二月を境に姿を見せなくなっていたのは、医師国家試験が控えていたからか。

 そして春、無事に試験をパスした彼は、この病院で研修を受けることを望んだのだ……彼女と少しでも近づけるよう。


 ――なんて純粋で、重い。


「ええ。五月から外来棟を中心に、今は整形にいます」

 たいしたことではないと、自由は告げる。

「外科系スーパーローテートか」

 だが、陸奥からすれば、彼の選択は自己満足でしかないように思える。
 二年間、各科で研修を積んで、彼はどの専門分野に進むのだろう。早咲と同じ脳神経外科か、それとも俺と同じ……


「将来のことはわかりません。ただ、僕は小手毬を救いたい」

 少女のためなら、他の患者の命すら投げそうな危うさが、陸奥を震撼させる。そして。


「……バカだな」
「なっ」
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