闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 ……待てよ。諸見里って。

「お前、諸見里病院の後継ぎか?」

 東北にある有名病院の名を出すと、自由は困惑したような表情で首を振る。

「病院は伯父が経営しているだけで、僕とは関係ないですよ。後継ぎなら従兄弟たちがいますし。それに、僕の実家はちいさな診療所ですから」
「じゃあ、親の跡を継ぐために?」
「そうですね。親の敷かれたレールを特に異論もなく歩いてました。医大を出て研修を終えたらそのまま親父を手伝うんだろうと思っていたんですよ……小手毬が、事故に遭うまでは」


 雷鳴が遠くなっていく。
 収束していく閃光を見送りながら、陸奥は自由の言葉を待つ。

 雨はもうすぐ止むだろう。
< 50 / 255 >

この作品をシェア

pagetop