闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 産婦人科の研修に入ったことで、自由は医大の先輩である楢篠の下についた。
 彼女はピンク色の白衣を着て、颯爽と仕事をこなしていく。

「はいっ」

 ピンク色の内装を施された産婦人科病棟は、内科外科病棟のような無機質さを感じさせない。
 だが、リラックスした状態で仕事に臨めるかと聞かれれば、そうではない。
 タクシーで到着した妊婦は破水していた。これから出産だ。


「そんなとこにいたら助産師さんの邪魔になるだろ、早くこっち」

 楢篠に腕をひっぱられて、呆然としていた自由は息を飲む。
 妊婦につきそう旦那も不安そうな表情をしている。楢篠は慣れた手つきで旦那を椅子に座らせる。

「あなたが慌ててどうするの。奥さんはこれから頑張るんだからね」

 そう叱咤して、彼女は奥へ進んでいく。自由も彼女の後に続く。


 ――そして。
< 54 / 255 >

この作品をシェア

pagetop