人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 そして、ふたたび訪れたこの機会を逃すかとばかりにヴァルクが口を挟む。

「さあ、どうする? 己の妙なプライドで子どもの夢を絶つか、考えを変えて未来(さき)へ進むか?」

 ヴァルクはやけに挑発的な言い方をする。
 司祭は悔しそうな顔で歯を食いしばる。
 イレーナは呆れる。

(もう! 陛下はもっと話術を学ぶべきだわ)

 イレーナは司祭に目を向けて、冷静にかつ穏やかに話す。

「騎士を駐在させるということは村を護衛するということです。つまり、あなた方が帝国に跪くのではなく、帝国があなた方を家族として守るということです」

 司祭は少し考えて、ふたたびイレーナを見据えて言う。

「我々は帝国の犬にはならないぞ。100年の恨みはそう簡単に払拭できるものではない」
「わかっています。だから協定を結ぶのです。お互いに干渉しすぎず、教会のルールに帝国は口を出さないと」
「本当に皇帝がそれを許すと思うか?」

 司祭の口ぶりが落ち着いたのを悟って、イレーナは笑顔で答えた。

「はい、大丈夫です。私におまかせください」

 司祭は不愛想な表情のまま、それでもいくらか冷静に「善処する」と答えた。


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