人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
このまま幸せな感覚に包まれて眠ってしまいたい。
などと思っていたら、ヴァルクが笑う声が聞こえて我に返った。
急いで飛び起きて、彼に抗議する。
「ひ、ひどいではありませんか! 突然このような……」
「だが、気持ちいいだろう?」
「うっ……はい。とても……」
それに関しては反論できない。
イレーナは返す言葉に迷っていると、ヴァルクはベッドに腰を下ろし、イレーナを見つめた。
そういえば、さっきまでひどく緊張していたのに少し落ち着いている。
(もしかして、気をまぎらわせてくれたのかしら?)
じっと見つめられて恥ずかしくなり、思わず顔を背けるも、ヴァルクは冷静に話を続けた。
「この寝具はセシルア王国から取り寄せたものだ。中身は羽毛らしいぞ」
「噂には聞いたことがありますけど、羽毛布団ってこんなにふわふわしているんですね!」
「俺にはやわらかすぎて困る。だが、女にとってはいいのだろう?」
「はい、それはもう! このお布団で眠ったら朝起きられなくなってしまいます!」
ヴァルクはふっと顔を背けて笑った。
イレーナはぽかんとしていたが、すぐさま我に返る。
(しまったー。皇帝陛下との初夜に私はなんという言動を! 私の首は明日無事かしら?)