人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 さーっと青ざめて、反省するもすでに遅い。
 だが、唯一救いなのはヴァルクが笑っていることだろう。
 イレーナはぎこちない笑顔を向ける。
 ヴァルクはベッドに手をついてイレーナに顔を近づける。
 ベッドがギシッと音を立てた。
 イレーナはどきりとして硬直し、胸中で何度も繰り返す。

(騒がず、狼狽えず、されるがままに)

 しかしヴァルクは手を出してくることはなく、先ほどの話の続きをした。

「この布団は羽毛と言っても最高級だぞ」
「羽毛にランクがあるのですか?」
「そうだ。これはマザーグースというガチョウが使われている。その中でももっとも高いランクの羽毛だ。保温、保湿、触り心地すべてが最高級品だ」
「そうなんですか。そんな素晴らしいものを取り寄せるなんて、お目利きがよいのですね」

 感動するイレーナを見て、ヴァルクは肩をすくめる。

「侍従のテリーが言っていたことだ。俺はよく知らん」
「え……?」
「俺は計算能力も鑑定スキルもない。(いくさ)で生きてきた男だからな」

 イレーナの表情が引きつる。

(ちょっと待って。この国大丈夫!?)




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