人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 ドレグラン帝国の町に突如現れたセシルア王国の軍勢はまるでパレードのように、華々しく都に行列を作った。
 表向きは国賓を迎える(てい)であり、民はみな同盟国(おともだち)の来訪を歓迎していた。

 そんな町中の歓迎ムードとは裏腹に、城内は大騒ぎだった。

「どういうことだ? セシルア王国の来訪など予定にはなかったぞ」

 何も知らされていない者たちは大混乱に陥っていた。
 そして、クーデターの首謀者である侯爵は帰還した皇帝に追い詰められていた。

「へ、陛下……お早い、お帰りでございまして……」

 焦る侯爵にヴァルクは半笑いで詰め寄る。

「なかなか粋な演出だな、侯爵。わざわざ傭兵を大量に雇って俺を出迎えてくれるとは」
「な、何のことだか……」
「だが、甘かった。お前は俺が【冷酷非道】と呼ばれる所以(ゆえん)を知らない」
「へっ……?」

 一瞬の動きも見えず、ヴァルクの剣が侯爵の耳をかすり、壁に突き刺さった。

「やり手の暗殺者。残虐な死刑囚。どれだけ強者を集めようが、俺の首を取ることはできない」

 侯爵の耳たぶから血が滴り落ちる。

「さて、どうしてやろうか。反逆者に処刑では生ぬるい。まずは耳と鼻、そして腕、そのあと足を落としてからゆっくり考えてやろう。もちろん、生かしたままでな」
「ひいぃいいいっ……!」

 侯爵は床に崩れ落ち、失禁した。



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