人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています




「……イレーナ、イレーナ」

 何度か呼びかけられて、イレーナは意識を取り戻す。
 重いまぶたをどうにか開けると、なつかしい顔がそこにあった。
 ほんの数日のあいだ見なかっただけなのに、会えたことが嬉しくて胸が震える。
 イレーナは精一杯の笑顔を作った。

「おかえり、なさいませ……」
「なんと酷い姿だ。お前をこんな目に遭わせた奴らを許せない」
「だ、大丈夫です……生きていますから。またあなたにお会いできて、よかった……」

 ヴァルクの大きな手に抱きかかえられて、イレーナは幸せな気分に浸った。
 だが、彼は怒りのあまり震えが止まらないようだ。
 すぐに周囲の衛兵に命令した。

「イレーナ妃を拷問した奴らとその関係者を全員俺のところへ連れて来い。俺の手でひとり残らず殺してやる」

 それを聞いたイレーナは痛みも疲れも忘れて、ぱっちり目を開けた。

「陛下、いけません。むやみに殺しては貴族派たちの怒りを買って内戦になってしまいます」
「かまわん! (いくさ)を仕掛けてくるなら上等だ。迎え撃ってやる」

 イレーナは抑えていた感情が爆発するように、両手でヴァルクの胸ぐらを掴み、怒鳴りつけるように訴えた。

「だめです! 戦争なんてしないでください! また親のない子を増やすのですか!」



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